(※このページは2022年2月11日に更新されました)
輸出先から緊急連絡。特定原産地証明書も必要だと。
「なにそれ?」
「いきなり追加?」
「説明聞いても、輸出?輸入?どっちがどっち?よくわからない」
とお困りではないでしょうか?
じつは、特定原産地証明書があると、輸入時の関税がゼロになったり、安くなったりするのです。
輸入者にとって関税は費用です。
仕入原価を安くできる大事な証明書なのです。
この記事では、特定原産地証明書の取得方法がわかります。
輸出手続に詳しい食品行政書士が、わかりやすくお伝えします。
特定原産地証明書とは
輸入者は輸入の都度、原則として、輸入地の税関に関税を支払います。
関税は、WTOという世界貿易の「元締め」が関税率(「一般税率」)を決めています。
一方、EPAという「個別の協定」を結んだ国々との貿易には特例があります。
世界共通の関税率よりも低い税率で輸出入を行うことができます。
これをEPA税率といいます。
つまり、原則は世界共通の関税率(一般税率)で、特例として、EPA税率があるわけです。
WTOという「元締め」にお伺いを立てた上で、仲間でEPAグループを作って安い関税で貿易しますね、という感じです。
特定原産地証明書とは、このEPAに基づいて発給される原産地証明書のことです。
輸入者がEPA税率で安い関税で輸入するために必要な書類です。
EPAを結ぶ目的は、特定の国や地域どうしでの貿易や投資を促進するためです。
その手段として、関税を撤廃・削減する制度を用意しているのです。
これまでに日本がEPAを結んでいる国や地域は以下のとおりです(2021年1月現在)。
シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、アセアン、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、EU、イギリス、アメリカ。
特定原産地証明書は、生産者からの製造データをもとに、船積ごとに輸出者が取得する必要があります。
輸入者が通関する時に必要ですので、契約が決まったら早めに取得して、輸入者に送る必要があります。
なぜ必要なの?
ずばり、輸入者が関税を安くするためです。
輸入者にとって関税は仕入原価の一部です。
関税が下がれば、その分、仕入原価が下がります。
仕入原価が下がれば、同じ利益を確保しながら販売価格を下げられます。
結果、販売しやすくなるメリットがあります。
具体的には、輸入者が、対象商品の輸入申告時に、特定原産地証明書を税関に提出します。
税関が書類確認後、関税がゼロになったり、安くなったりして、商品を販売できます。
また、輸出者にとってもメリットがあります。
お客様である輸入者が販売しすくなれば、輸出者への注文が増えるでしょう。
売上増加が期待できますね。
つまり、輸入者、輸出者双方にとって、とてもメリットがある証明書です。
ですので、輸入者から特定原産地証明書の取得依頼があったら、協力していただきたいと思います。
どうしたら取得できるの?
申請交付まで手続きを8つのステップで説明します。
1.輸出しようとする商品のHSコードを調べる(生産者が行う)
HSコードとは、商品の国際的な「背番号」です。すべての商品を6ケタで分類ます
その商品の原材料や形状、特徴に注目して分類します。
大分類(2ケタ)、中分類(2ケタ)、小分類(2ケタ)と段階を踏んで、番号をつけます。
原則、世界共通ですが、一部例外もあります。
そもそも、「その商品」をひとつの分類(背番号)だけに当てはめることに無理があります。
たとえば、ペットボトル入りのお茶。
「容器入り食品」と見るのか(大分類は食品)、「液体のお茶」と見るのか(大分類はお茶)で、HSコードが別々になります。
判断が分かれたときには、最終的には「輸入国」の税関が決定します。
ただ、新商品だったりするとその特徴がわからず、輸入国の税関で判断に迷うことがあります。
そのときには、輸出者が、まず輸入者に商品説明します。
その後、輸入者を通じて、輸入国の税関で確認することとなります。
2.EPA税率を調べる(生産者が行う)
対象EPAの輸入国と商品のHSコードの組み合わせ(マトリックス)で調べます。
↓
EPAの協定書、附属書や、ジェトロが提供している「世界各国の関税率」を使います。
↓
EPA税率と一般税率を調べます。
↓
EPA税率が一般税率より低いことを確認します。
商品によっては、一般税率とEPA税率が同じ場合もあります。
※同じ場合は特定原産地証明書を取得するメリットはありません。
3.原産地規制・品目別規制を調べる(生産者が行う)
対象となるEPAで、どのような要件を満たせば「原産品」と認められるかを調べます。
個々のEPAで要件が異なるため、非常に重要なステップです。
具体的には、EPAの協定書や附属書を読み込んで、要件をチェックします。
4.原産性(原産品として認められること)の確認をする(生産者が行う)
確認方法には3つのカテゴリー(考え方)があります。
どのカテゴリーに当てはまるかを確認します。
ここも非常に重要なステップです。
1)完全生産品
国内で完全に生産・採取されたもの(農産物、鉱物など)。
2)原産材料のみから生産される製品
最終生産品の一つ手前の工程の原材料が原産品(国内で加工されたもの)であるもの。
3) 非原産材料(輸入品)を用いて生産される産品
非原産材料が輸入品であっても、国内で「実質的な加工」が行われたか、「付加価値」の割合が大きいもの。
1)、2)を調べるのは、それほど難しくはありません。難しいのは、3)のケースです。
「実質的な加工」とは、原材料と製品を比較して、HSコードの大分類の番号が変わるような大きな加工を指します。
まず、原材料それぞれのHSコードと、製品のHSコードを調べます
これらのHSコードを対比してみて、製品のHSコードで大分類が変わっているかチェックします。
変わっていればOKです。
しかし、変わっていなければ、次の「付加価値」の割合を調べる必要があります。
「付加価値」の割合とは、利益を含む販売価格の中から非原産材料コストを差し引いた金額の割合を指します。
まず、製品に占める原材料それぞれの仕入原価と配合比率、加工費用、包材、運賃、利益の内訳を出します。
つぎに、販売価格から非原産原料コストを差し引いた金額(1)と販売価格(2)の比率(%)を計算します。
つまり、(1)÷(2)の比率(%)が、各EPAで定める比率(%)をクリアしていればOKとなります。
これらのデータ収集と検討は、このあとの6.の原産品判定依頼をする上で、とても大事な手続となります。
5.企業登録をする(生産者及び輸出者が行う)
日本商工会議所宛てに登録申請します。
6.原産品判定依頼をする(生産者が行う)
さきほどの4.の原産性に関するデータをもとに、日本商工会議所宛てに依頼をします。
原則、3営業日で判定結果「原産品判定番号」が通知されます。
原産品であるとの判定を受けた場合、輸出者に「原産品判定番号」の使用を認める旨の同意通知書を提出します。
ゴール(特定原産地証明書発給)向かって、同意通知書というバトンで、生産者と輸出者がリレーするイメージです。
7.特定原産地証明書の発給申請をする(輸出者が行う)
原産品として承認された産品について、輸出者が発給申請をします。
原則2営業日で発給されます。
8.特定原産地証明書の交付を受ける(輸出者が受け取る)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
まとめますと、
特定原産地証明書は、
・関税がゼロになったり、安くなったりする大事な証明書
・輸出者、輸入者双方にメリットがある
・輸出国で、生産者、輸出者が取得する
輸出拡大のために、ぜひ、利用されることをおすすめします。
申請交付手続きのキモとなる非常に重要なステップ。
それは、上記3の原産地規制・品目別規制の調査と、4の原産性の確認です。
この調査と確認には貿易の専門知識が必要です。
専門家に依頼することも検討されてはいかがでしょうか?
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