(※このページは2022年2月8日に更新されました)
いま、官民挙げて「輸出大国・日本」が進んでいます。
お役所、銀行、経済団体から、「御社も輸出を始めませんか?」というお誘いはないでしょうか?
輸出と聞くと、世界進出、世界を相手にしたビジネス、という心地よい響きがありますよね。
一方で、
「お客様が見えない」
「何か特別にすることあるの?」
「ちゃんと払ってくれるの?」
という不安もあるかもしれません。
じつは、輸出にはいろいろトラブルが潜んでいるのです。
この記事では、輸出契約でのトラブル原因3つとその対策をお伝えします。
「転ばぬ先の杖」になるように、輸出に詳しい食品商社マン行政書士がわかりやすくお伝えします。
原因その1 距離の問題
輸出とは、商品を海外に届けることです。
お客様が海外にいるだけで、契約して、出荷して代金を回収するのは国内商売と変わりません。
では、原因1つ目の距離の問題とは何でしょうか?
海外までの輸送期間が長いために、商品が「ちゃんと」到着するか予測がつきにくいことです。
たとえば、長期間の輸送で、品質が劣化したり、荷崩れで商品が破損してしまうことがあります。
もちろん、航空貨物であれば、3日もあれば、世界中のほとんどの場所に届くでしょう。
短い期間の輸送では、品質劣化や荷崩れは防げるかもしれません。
しかし、航空運賃はとても高いので、航空運賃分を吸収できる価格の高い商品に限られます。
したがって、多くの商品はコンテナ船での輸送となります。
船での輸送期間は、北米で2~3週間、ヨーロッパ、南米で4~6週間くらいです。
なお、ヨーロッパ、南米向けでは、赤道(熱帯地域)を超えます。
このとき、コンテナ内の温度は、摂氏60度を超えます。
商品によっては、輸送期間中の高温で「品質」が劣化します。
対策として、まず、輸送時の破損、品質劣化リスクを洗い出します。
その上で、このリスクを輸出者、輸入者どちらが負担するのかを契約時に決める必要があります。
原因その2 言葉の問題
言葉の問題は、その背後にある文化の違いも含むため複雑です。
たとえば、日本語で、「○○○することは、できますか?」と質問を受けたとします。
ここには「できるのでしたら、やってください」という意味が込められていると思います。
ところが、タイ語ですと、「できる」ことと、「やる」ことは、別の判断、行動なのです。
「できる」のですね、では、「やってくれる」のですね、という二段階の確認が必要です。
ですので、「できる」という答えだけでは不十分です。
もうひとつ、「やってくれますね」と質問して、「やります」までの答えが必要となります。
「できる」との返事で、「やってくれる」と思い込むのは、日本人によくある勘違いです。
また、商品をA地点からB地点まで運ぶとします
日本語では、B地点に着いてはじめて、「来た(届いた)」と言います。
しかし、タイ語では、A地点を出発した時点で、「来た」と言います。
まだ向かっていて、到着していないのに「来た」というのです。
日本語では「まだB地点に来ていない」のに、タイ語では「来た」となります。
これが、商品が着いた、着かないのトラブルのもととなるのです。
言葉の問題はとても複雑です。
ですので、お互いの外国語である英語を「中立的な」言語として使うのはいかがでしょうか?
加えて、機械的、客観的に判断できる日時や数字で確認し合うことが大切です。
原因その3 おカネの問題
品代をいつ支払うかの問題です。
回収リスクを考えると、輸出者は、「輸出前に」商品代金をもらいたいですよね。
一方、輸入者は、商品が現地に届いて、通関手続が完了して、検品してから支払いたいわけです。
対策として、契約時に決済時期をしっかり取り決める必要がありますが、だいたいモメます。
最悪契約がご破算になるケースもあります。
商品は気に入ってもらえたのに、決済条件でダメになるのはもったいですよね。
落とし所として、輸出前に半分、現地検品後1週間以内に半分支払うのはいかかでしょうか?
少々モメるかもしれませんが、大切なのは、契約の時に決済条件をしっかり決めることです。
また、別の対策として、輸出者が貿易保険(輸出保険)に入るという方法もあります。
輸入者からの支払いが滞った場合、一定の条件のもと販売代金の大部分を保険会社が負担します。
輸出者が輸入者の支払い能力を心配していると輸入者に知られるのは、気持ちのいいものではありませんよね。
ですので、輸入者に貿易保険に入っていることを伝える必要はありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
輸出、海外進出というと、一見華やかですが、以下のことに注意が必要です。
1.距離の問題
2.言葉の問題
3.おカネの問題
海外から引き合いがあったときは、この3つを念頭において対応されることをおすすめします。
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